えぐち・とおる
医学博士。1981年、九州大学医学部卒業。九州大学医学部臨床教授・非常勤講師。日本外科学会認定外科専門医、日本ヘルニア学会理事、九州ヘルニア研究会代表世話人、日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究会世話人、日本短期滞在外科手術研究会常任幹事。

2011年には第9回日本ヘルニア学会学術集会会長、14年には第4回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会会長、15年には第11回日本短期滞在外科手術研究会学術総会会長を務める

鼠径部切開法と腹腔鏡下修復法のTAPP、TEPの三刀流を使い分け、
デイサージェリーセンターによる日帰り手術で実績を上げる
TEPを中心とした腹腔鏡下修復術
江口副院長は高度手技であるWhite TEPについて「豊富な経験が必要であることは確かですが、この綺麗な視野でアプローチを行うというこだわりがなければ質の高い手術は実現できません」という
 「全ての鼠径ヘルニアに対応できるただ一つの修復術式はありません。ワールドガイドラインでも外科医や施設においては、前方到達法と後方到達法の両方を行えることが推奨されています。その中でも鼠径部の前からアプローチするリヒテンシュタイン法と後ろからアプローチする腹腔鏡下修復術がベストであると思っています。鼠径部切開法とTAPP(腹腔鏡を用いた腹腔内到達法)、そしてTEP(腹腔前到達法)の三刀流ができないと鼠径ヘルニアにおける満足のいく高品質な治療は難しいといえるでしょう」と原三信病院の江口徹副院長・外科主任部長・デイサージェリーセンター長は話す。
 腹腔鏡下修復術で中心に行っているのがTEPである。「TEPは、腹膜、臓器損傷の心配がなく、腹腔内癒着(ゆちゃく)の影響を受けない手術で、ほかにも気腹圧による腹壁筋の牽引(けんいん)がない、腹膜縫合を必要としない、術後腸管癒着が少ないなど数多くのメリットがあります」
繊細な手技を要する高度なWhite TEP

1998年にデイサージェリーセンターを開設し、20年の歴史をもつ日帰り手術のパイオニア。鼠径ヘルニア手術実績では、日帰り鼠径部切開術が全体の8%、日帰り腹腔鏡下修復術が18%を占めるなど、日帰り手術は増える傾向にある
 同院で心がけているのは、White TEPという層構造に留意した腹膜前腔剥離(はくり)による手術である。TEPの場合、腹膜と筋肉の間をきちんと剥がさないと術野が出血等で赤くなり、メッシュを正しく当てることができず、再発のリスクも高まる。「その点、腹膜前筋膜のなかの血管がない層を見極めて剥離を行った場合、出血の極めて少ない質の高い手術が可能となり、剥離手順も定型化できます。TEPでは2本の鉗子(かんし)が自由に使え、操作もほぼ順行性であるため精緻な剥離操作が可能です。また、メッシュのハンドリングが容易であり、適切なサイズのメッシュを、最適な位置に設置することができ、再発の減少が期待できます。TEPは、MIS(最小侵襲手術)を徹底的に追求した治療法です」
 腹膜前腔の血管を避けて、数㎜にも満たない厚みの腹膜前筋膜を切開していくため、海外の医師らから「ドクター江口の手術はアートだ」と評されるほどの繊細で高度な手技を要する。
患者満足度も高く早期社会復帰できる日帰り手術
看護部副部長 宮﨑 さとみ
日本短期滞在外科手術研究会世話人
DSコーディネーター認定委員会委員

九州大学医学部学生向けのハンズオンセミナーで講師を務める江口副院長
 原三信病院では、1998年からデイサージェリーセンターを開設し、鼠径ヘルニア手術をはじめ、胆石症の手術や前立腺試生検、尿失禁手術、透析のシャント術などで日帰り治療を行っている。
 「当院では、1998年4月~2017年6月までで日帰りによる鼠径部切開術172例、腹腔鏡下修復術406例を手がけてきました。合併症は極めて少なく、より安全で、効率的な手術を実現しています。患者満足度も高く、早期に社会復帰が可能になっています」と江口副院長は日帰り手術の利点を述べる。
 江口副院長が常任幹事を務める日本短期滞在外科手術研究会では、DS(デイサージェリー)コーディネーターを認定している。看護師を中心として日帰り手術の専門知識と技術を備えたコーディネーターを育成しようというもので、2018年6月から原三信病院の宮﨑さとみ看護部副部長が資格認定委員会の委員長に就任する。
 「デイサージェリーセンターでは、手術の説明をDSコーディネーターである看護師も行い、看護も担当します。この患者さんが日帰り手術で大丈夫かどうかというジャッジにもかかわります。たとえ医師がイエスといっても、看護師が同意できない場合、医師に対策を提言することもあります」と宮﨑副部長は強調する。
 同院では、「恕(じょ)」の精神を尊んでいる。恕とは思いやりの心のことで、患者さんと向き合いながら、安心して治療を受けてもらえるような看護を実践する。「日帰り手術の患者さんに対してコミュニケーション能力の高さが求められます。24時間フォロー体制で臨んでいますから、何でも、いつでもご連絡ください」と宮﨑副部長は言葉を重ねる。
「伝承と発展」をモットーに後進の育成・指導に努める
 鼠径ヘルニア手術のエキスパートドクターとして豊富な経験を積み重ねてきた江口副院長は、九州大学病院外科医局向けや九州大学医学部学生向けのハンズオンセミナーなどを積極的に開催している。「『伝承と発展』をモットーに、自分が腕を磨き、学んだものを、きちんと伝え、続けていき、さらに発展させることが大事だと思っています」と後進の育成・指導に余念がない。「鼠径ヘルニアは、恥ずかしい病気と思っている人が少なくありません。痛みの少ない確実な治療を『日帰り』でできるので、深刻に考えずに来院していただければと思います」と江口副院長は鼠径ヘルニアで悩む患者さんに対するメッセージを語ってくれた。

 

※内容は2018年5月29日時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 原三信病院
フリガナ ハラサンシンビョウイン
診療科目 内科、循環器内科、血液内科、消化器内科、肝胆膵内科、呼吸器内科、糖尿病内科、腎臓内科、脳神経内科、外科、胸部外科、整形外科、泌尿器科、婦人科、脳神経外科、放射線科、麻酔科(下澤浩基)、病理診断科、リハビリテーション科、歯科、歯科口腔外科、精神科、リウマチ科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科
TEL 092-291-3434
住所 福岡県福岡市博多区大博町1-8
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