医療現場の第一線で活躍するドクター。医者として大勢の患者を救ってきたドクターの軌跡を辿る!医者を志したきっかけから今だから話せる苦労話。様々な経験を経て培ってきた豊富な知識と高い技術力。実力あるドクターが「選ばれる理由」を今解き明かす! !

とやま・まさひろ
2005年、北里大学医学部卒業。北里大学病院、北里大学東病院、同救急救命センターを経て、北里大学メディカルセンターにて人工股関節置換術の研鑽を積む。2017年、世田谷人工関節・脊椎クリニック。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会運動器リハビリテーション専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、身体障害者福祉法指定医

プロレスラーに憧れた少年時代

リングドクターを目指し医学部へ

 「高校生の時進路を考えるようになって、はじめて医師という職業を意識したような気がします」
 子どものころは格闘家になることを夢見ていたという塗山正宏医師は、神奈川県藤沢市で産婦人科医院の次男として、医師である父親の背中を見て育ちました。3人兄弟の末っ子で、「甘えん坊だった」という塗山少年は、テレビで見たプロレスラーに憧れて筋力トレーニングに没頭する活発な少年時代を送ります。中高一貫の進学校に入学し、アメリカンフットボール部や柔道部で活躍。高校生からは格闘技をはじめ、プロの格闘家を夢見てスポーツジムに通う日々を過ごしました。
 一方で、患者さんのために働く父の姿は心の奥に深く刻み込まれていたのでしょう。分娩があれば休日、夜間もクリニックに駆けつける父のため、家族旅行もままならない生活に「医者は大変だな。俺にはできないな」と感じていたそうですが、高校2年生で進路を決める時には迷わず医学部に進むことを決めました。

 そして1999年、北里大学医学部に入学。大学のころについて塗山医師は、「とにかく試験がつらかった」と振り返ります。学年が進むにつれて勉強が忙しくなり、高校生のころから続けていたジム通いも減って行きましたが、格闘技に対する情熱は衰えることなく、「リングドクターになりたい」という願いで整形外科を専門に選びました。
 大学卒業後の2005年4月、北里大学病院に研修医として就職。2年間の初期研修が修了した後は、北里大学病院の整形外科に勤務し、北里大学東病院、北里大学病院救急救命センターを経て、2012年4月からは北里大学メディカルセンター(埼玉県北本市)に移りました。 
 北里大学メディカルセンターへの異動は、塗山医師に一つの転機をもたらしました。主治医になったことで手術を担当する件数が増え、手術の面白さに気づいたのです。
「どうやったらもっと手術が上手にできるのか、どうやったらもっと速くできるのか、患者さまの負担を少なくできるのか。いつもそのことばかり考えていました」
 手術を録画したビデオを繰り返し見て研究し、手術の方法を工夫する日々が続きました。

速く、正確に理想の手術を追い求める

 速く、正確に手術を行うことは、出血量を減らし、手術創を外気にさらす時間が短くなるため感染症のリスクも少なくなります。さらに麻酔の時間も短くなり、総体的に患者さんの身体に対する負担を減らすことができます。このため、早期の回復、退院が期待できるのです。
 塗山医師が得意とする人工股関節置換術を受ける患者さんの多くは、股関節の痛みのために歩くこともままならず、すがるような思いで病院にやってきます。手術が終わって、2週間後には自分の足で歩いて帰っていく患者さんたちの笑顔を見るの?が、最高の喜びだと塗山医師はいいます。
 「患者さまとの出会いは、偶然の巡り合いです。『先生に診てもらってよかった』といっていただけた時は、本当に嬉しいですね」
 実際、北里大学メディカルセンターには患者さん同士の口コミで塗山医師を知り、来院する人が少なくなかったそうです。リハビリテーション室で歩行訓練を行っていた70代の女性は、友人の紹介で近隣の市から来院しました。両足の人工股関節置換術を受けましたが、手術から1週間が経ち、2つの杖を使って歩くことができるようになっていました。女性は「塗山先生は手術前の説明が詳しくて丁寧だったので信頼して手術を受けることができました」と話しました。
 塗山医師によると北里大学メディカルセンターに移ってから再開した筋力トレーニングも、実は手術の技術向上に貢献しているそうです。人工股関節置換術は、大腿骨頭を外して人工股関節を挿入する際にかなりの力を必要とします。また、機具を使って骨を削る際にも機具の振動に負けない腕力が必要です。「筋力がついたことで、体幹が安定し、骨を削る時に機具の振動で身体がぶれることがなくなり、より手元が安定するようになりました」と塗山医師。いまでは手術の合間をみては筋力トレーニングに励んでいるそうです。
 人工股関節置換術の分野で一目置かれる存在となった塗山医師ですが、まだ、自分の技術に満足していないといいます。より手術の腕を磨くため、2017年から新しい世界に挑戦することを決めました。北里大学メディカルセンターを辞めて、開業するという選択です。

30代で開業を決意、新しい挑戦がはじまる

 「私はいま37歳ですが、父も30代で開業しました。漠然と自分は40代で開業すると思っていましたが、30代での開業が早いとは思っていません」
 クリニックは東京都世田谷区北部に位置し、整形外科全般を専門として、なかでも人工股関節置換術に主眼を置いた施設です。特色の一つは、院内の画像診断センターで大学病院にも引けをとらない検査機器で精密な画像判断を即時に得られることです。もう一つは同ビル内の、東京ヒップジョイントクリニック(狩谷哲院長)との連携です。人工股関節置換術を受ける患者さんは、手術前までは塗山医師のクリニックでケアを受け、手術は東京ヒップジョイントクリニックで塗山医師の執刀のもとに行われ、入院・リハビリ生活を安心して受けられます。
 こうした連携は塗山医師にとって新しい取り組みですが、「もともと新しいことに挑戦するのが好きなタイプなので、自分を試したいという気持ちが強いですね」とクリニックへの思いを語ってくれました。

地域医療に貢献するクリニックを目指して

 日本の多くの地域では高齢化が進んでいますが、クリニックが位置する世田谷区も例外ではありません。高齢者を取り巻く問題の一つとして近年、ロコモティブシンドロームが注目されています。これは老化により下半身の筋力が衰えることで、進行すると要介護状態となり、転倒や骨折を機会に寝たきりとなる恐れもあります。
 塗山医師はクリニックを通じて、ロコモティブシンドロームの予防など啓発活動にも力を入れていきたいと考えています。
 「クリニックを通じて、地域医療に貢献したいです。人工関節手術だけでなく、骨折や打撲、腰痛や関節の痛みで困っていることがあれば何でも気軽に相談できる場所にしていきたいです」



※内容は2017年7月時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

医療機関情報
施設名 世田谷人工関節・脊椎クリニック
フリガナ セタガヤジンコウカンセツ・セキツイクリニック
診療科目 整形外科
 専門外来(股関節、膝関節、骨粗鬆症、脊椎)
 一般整形外科
リハビリテーション科
画像診断センター
 放射線診断科(X線システム、CT、MRI)
TEL 03-5931-8756
住所 東京都世田谷区南烏山6-36-6
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